2025.8.7 みすず野
2025/08/07
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学生当時の帰省は、新宿駅から急行を利用した。特急に乗るような金銭的な余裕はなかった。ある夏、初めて八王子駅から鈍行に乗った。時間だけはあったから、駅ごとに乗り降りするその土地の人を見ていた。6時間余りかかった◆政治学者の原武史さんは八王子市の高尾駅から、編集者4人と長距離鈍行列車に乗る。午後2時2分に出て、中央本線、篠ノ井線、信越本線を経由して長野に6時53分に着く。7年前の3月。松本着は5時31分、客が入れ替わり、運転士も女性から男性へ交代する◆「西日を浴びながら、通勤帰りらしき女性客がNHKのテキスト『100分de名著ユゴー ノートル=ダム・ド・パリ』を熱心に読んでいる。首都圏の車内ではめっきり見かけなくなった光景に、さすがは教育県と感じ入ってしまう」(『最終列車』講談社文庫)。長野到着まで5時間弱だった◆お盆が近づいて、アルバイトに忙しい学生たちも帰省の時期だろうか。初めての夏休みで、帰りを待ちわびる家族もいる。きょうは立秋。連日の猛暑に、たとえ暦の上とはいえ実感に乏しい。それでも里山では穂が出た稲の上を飛ぶトンボが増えた。