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2025年

2025.8.5 みすず野

2025/08/05
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 玄関先のわずかな場所に、シソが顔を出し、みるみるうちに葉を広げる。放っておくと、秋には球状の実を付ける。庭の片隅に数株植えられているのを見かける。畑の隅にも一塊になっている。葉と実の香りは独特。梅漬けの色づけにも用いる◆「走り出て紫蘇一二枚欠きにけり」(富安風生)。この句を、作家の髙橋治さんは「不時の客なのか、素麺がゆで上がってから気がついたのか、昔はよくこんな風景があったように思う」と解説する(『くさぐさの花』(朝日文庫)◆髙橋さんの庭は花を育てるため、野菜の植え場所が年々狭くなる。「だが、走り出て欠いて来るものだけには贅沢をすることにしている」といい、シソのほか十数種類のハーブを作ったこともあると。それは「夏の間、素麺狂いが続くからだ」◆「夕べとはむらさきの刻紫蘇にほふ」は松本市出身の俳人・藤岡筑邨さん=東京都=の句。この句を引き「さて今宵も素麺と致そうか」と結ぶ。学生の頃、青果店のアルバイトで、青ジソを10枚ずつ輪ゴムで束ねる作業をした。この時初めてその存在を知った気がする。こちらの方が度々食卓に上る。シソの変種だという。

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