2025.8.3 みすず野
2025/08/03
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6+9=15。「この算数の式に出てくる数字を覚えていてください」。100歳近くの男性が、小学生たちに向かって呼び掛けた。松本市内で昨年開かれた親子平和教室でのこと。数字は言わずもがな、昭和20(1945)年8月に大きな出来事があった日だ◆原爆忌、終戦の日。決して忘れてはいけない日だからこそ、男性は小学生たちに念を押すように算数の式を教えた。人の命が粗末にされた話は、小学生たちの心の琴線に触れたようだ。男性を見つめるまなざしが真剣だった◆筆者が小学校低学年時分、原爆の悲劇を伝える児童文学『ふたりのイーダ』を担任教諭が昼休みに朗読してくれた。戦争の怖さ、悲しみを知る機会となった。隣のクラスとの合同授業で、戦争に対する意見発表をしたことがあった。筆者の同級生たちは戦争の悲惨さを語り、違うクラスの人たちは戦闘機の格好良さを話した。子供心に教育の大切さを思った◆戦後80年。戦争体験者は減り、高齢となった。貴重な体験談を聞いた人たちが、後世に役立てていかなければならない。男性もそうだが、体験者の思いは「絶対に戦争をしてはダメだ」で集約される。