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2025年

2025.8.1 みすず野

2025/08/01
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 80年前の8月を経て、この月は1年の中で特別な月となった。俳人の小川軽舟さんは『名句水先案内』(角川書店)で「死者と生者の八月」と題したエッセーを「八月は私たち日本人にとって死者と生者の行き交う特別な月である」と書き出す◆「盆の行事と太平洋戦争の終結とが同じ時期に重なったことで、その印象は揺るぎないものになっただろう」と続く。子どもたちを連れて帰省。墓参りをすませ実家の親きょうだいと先祖の霊を迎えて過ごす◆その一方で「八月六日の広島、九日の長崎と原爆投下の日が続き、十五日の終戦の日を迎える」。戦没者たちの霊もそれぞれの家に帰る。「もし終戦が八月十五日でなかったら、その日がここまで深く私たちの意識に根を下ろすことはなかったかもしれない」と◆都市化、核家族化、少子高齢化が進むなかで盆の行事は次第に風化し死者の霊を迎える意識も薄れていくのではないか。「その時、死者の霊はどこをさまようことになるのだろうか」と結ぶ。「8月ジャーナリズム」という、この月に戦争関連の報道が多くなることを揶揄する言葉がある。小紙は無縁だ。年中伝え続けていく。

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