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2025年

2025.7.28みすず野

2025/07/28
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 夏休みの花は何、と聞けば、おそらくほとんどの人が朝顔と答えると思っている。小学校では一人一鉢ずつ育てた。絵日記に描いた覚えのある人も多いのではないだろうか。色とりどりの花を、家々の庭先で見かける◆天文民俗学者の野尻抱影(1885~1977)は『星三百六十五夜 春・夏』(中央公論新社)の7月28日付に「朝顔」と題して、「私が好きなのは紺と水いろの花で、ずんずん明けてくる光の中で生き生きと眼に涼しい」と書く◆「戦争が終って呆然とした気分の中で、何をおいても私が見たくなったのは朝顔の花だった。西洋の花でなく、この純日本らしい、素朴で可憐な草花が見たくてたまらなかった。そして、大分離れた農家の垣に咲いていると聞いて、下駄を野原の露にぬらしながら出かけて行った。すると藍いろの豆朝顔がびっしりと咲きみだれていた」◆花々が広がる。「しみじみ眺めながら、はっきり戦争が終ったのを感じた」と結ぶ。初版は昭和30(1955)年。朝顔は種をまかなくても毎年あちこちで花を開く。見かけるのは近年多い大輪ではなく小さな花の数々。抱影が見たのはこれなのだろうか。

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