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2025年

2025.7.16 みすず野

2025/07/16
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 畑や田んぼに沿って延びる道路沿いや土手で、オレンジ色の花を見かける。『野と里・山と海辺の花ポケット図鑑』(増村征夫著、新潮文庫)を見ると、カンゾウの花だ。一重の花がノカンゾウ、八重がヤブカンゾウとある◆ノカンゾウは野に咲く、ヤブカンゾウはやぶに生えるという意味があり、漢字だと萱草。萱はカヤとも読み、葉が屋根をふくカヤに似ていることに由来する和名だという。ヤブカンゾウの方が「より赤味の濃い黄赤色」とある◆『合本俳句歳時記』(角川書店編)には、夏の季語として「萱草の花」が載る。ユリ科の多年草で「鬼百合に似た黄赤色の重弁花を開く」とある。「萱草や浅間をかくすちぎれ雲」寺田寅彦。ニッコウキスゲに似ているけれど、そんなはずはないよなと思いながら以前から見ていた◆花の色が鮮やかで、夏の野に目立つ。気をつけて見るとどこでも花の周囲は草を刈ってある。作業をされた人が草と一緒に刈り取ってしまうのが忍びなく、面倒でも1輪、2輪と残されたのだろう。そうした場所があちこちにある。汗だくになりながら、何人かがかけた思いがそこここでそっと花を開いている。

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