2025.7.15 みすず野
2025/07/15
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戦争の体験や記憶がある人たちに、当時の様子を取材して掲載している。語られるひと言ひと言は貴重な証言であり、次の時代に伝えなければならないからだ。戦後80年の夏、かけがえのない言葉を積み重ね続ける◆作家の丸谷才一さんは、「漢文の復習」と題したエッセーで「世には現実主義者とかいふ連中がゐて、反戦運動を冷笑する」とした上で「しかし、反戦平和運動と比べても桁違ひに馬鹿ばかしいものは戦争なのである」と断じる(『どこ吹く風』講談社)◆戦争の後、昔の日本人は、敵味方双方の戦死者を供養した。元軍来襲時には蒙古の死者を弔う。それが明治以降の戦争ではなくなる。供養したのは死者の霊がたたるという迷信を恐れてのことだが「国籍などといふ詰まらぬものにとらはれずに、哀れな運命を強ひられた者に優しい心を見せることができた」のであり、その点で「科学より迷信のほうがいいのぢやないか」(「昔の日本人))という◆政党などが打ち出す新たなキャッチフレーズのような言葉は注意が必要だ。そこには戦争につながる因子が、潜んでいることがある。一つ一つ見極めることを忘れたくない。