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2025年

2025.6.17 みすず野

2025/06/17
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 夜中に強い雨が降った朝、外に出ると蒸し暑い風の塊のような空気が漂っていた。いかにも梅雨時の夜明けだ。道路と敷地の境目から伸びたホオズキが、白い花を付けている。これがあの赤い実になるというのは想像しにくい。ホタルブクロも間もなく咲きそうで、梅雨時の役者がそろってきた◆「こうまで湿度が無くても、よさそうなものを、とにかくこれが、今ごろの日本の姿ときまっているのだから仕方がない」と、宮内庁侍従長を務めた入江相政(1905~85)は、苦しいほどの蒸し暑さを随筆「梅雨小袖」に書いた(『日本の名随筆・雨』作品社)◆「もう少し低ければと、思わないではないが、私はこういう湿度のうちに生まれて、そして育ったのだもの、乾燥した国の人たちほどには苦にならない」という。梅雨の湿り気はうるおいを与える。日本の文化は、なにかにつけて「湿り気」の上に立っていると◆「長くのびだススキの葉、窓もあけてあるのに、夜風もないのか、いささかのゆらぎも見えない。つゆはいま、この部屋の中いっぱいに、みなぎっている」。うっとうしい梅雨の夜が、かけがえのないひとときにみえる。

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