2025.6.15 みすず野
2025/06/15
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松本の交通事情を大きく変える出来事が明治35(1902)年6月15日にあった。篠ノ井線開通である。最初の列車の松本到着が午前11時すぎ。『松本市史』によると、雨天にもかかわらず市街の人出は、何万人に達したというから盛り上がりが分かる◆篠ノ井方面から延伸し、開通までには文字通り山あり谷ありだった。日清戦争のため工事の着手が遅れ、鉄道局が着工態勢を整えたのは29年4月だった。同戦争後の経済不況で工事費が不足し、31年4月に工事が一時中断。事態に業を煮やしたのだろう。松本町長と東筑摩郡全村長の署名を持って31年10月、工事の速やかな再開を訴える陳情書を国に提出した◆地域の首長たちこぞっての訴えに地元の期待のほどがうかがえる。少しでも早く開通を│。住民たちの願いが聞こえてくるようだ。当時の人たちに汽車のスピード、輸送力はとてつもなく魅力だっただろう◆鉄道開通で松本停車場(駅)ができ、街づくりに大きく関与していく。人の往来の多い駅前に商店街が自然に広がっていった。その駅前の活性化が今、大きな課題となっている。地域の先達の苦労に報いる方策が待たれる。