2025.6.14 みすず野
2025/06/14
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松本市の図書館で目当ての本を探していると、写真家・増村征夫さんの作品集が偶然目に入った。小紙の書評欄で執筆陣の一翼を長年担ってくださり親しくしていただいた。目に留まった本は『星の降る里~信州・安曇野からの季節の便り』小学館。地域に寄り添った美しい風景写真を多く残した増村さんらしい北アルプスや星の明かり、点在する街の光で構成された写真が表紙を飾る◆大町に住み、精力的に活動していたが、病気のため平成29(2017)年夏に急逝された。前年の暮れに29年発売予定の新刊の話を熱心にしてくれていただけに突然の訃報に驚いた。享年73。早過ぎる別れを惜しんだのを思い出す◆植物にも造詣が深く、花や樹木の「ポケット図鑑」シリーズを全5巻刊行した。新刊ができる度に弊社に足を運んでくれ、制作時のエピソードを聞いたのが懐かしい。振り返ると、笑顔の増村さんしか思い出せない◆作品集のページを繰ると、日光が水面を照らす安曇野市穂高の万水川、新緑が鮮やかな安曇野の森といった風景が目に飛び込んできた。増村ワールドを堪能するうち温顔に出会えた気がして目頭が熱くなった。