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2025年

2025.6.13 みすず野

2025/06/13
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 『放浪記』『晩菊』などの作品で知られる作家の林芙美子(1903~51)は「朝御飯」と題した随筆で「夏の朝々は、私は色々と風変わりな朝食を愉しむ」と書いた。「『飯』を食べる場合は、焚きたての熱いのに、梅干をのせて、冷水をかけて食べるのも好き。春夏秋冬、焚きたてのキリキリ飯はうまいものです」(『林芙美子随筆集』岩波文庫)と◆続けて「子供の寝姿のように、ふっくり盛りあがって焚けてる飯を、櫃によそう時は、何とも云えない」のだと。昭和10(1935)年ごろに発表された。炊きたてのご飯のいい匂いが漂ってくるようだ◆櫃は「おひつ」などと呼ばれていた。炊き上がったご飯を釜から移しておく入れ物。子どものころは家でも使っていたが、炊飯ジャーの普及で家庭からはほとんど姿を消したのではないだろうか。飲食店や旅館などでは見かけることがある◆国のコメ政策の失敗で、連日鶏が鳴くような古いコメのニュースが報じられている。生産者の思いはどうなのだろう。随筆は「梅雨時の朝飯は、何と云っても、口の切れるような熱いコオフィと、トオストが美味のような気がします」ともいう。

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