2025.6.6 みすず野
2025/06/06
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トマト嫌いな人が案外多いと知って驚いたことがある。子どもの頃から当たり前に食べていたし、特に気になるような臭いもなく、見た目だって愛きょうがあるような。でも、日本人は色や臭いが好きになれなかったと知った(『やさいの時間86号』NHK出版)◆17世紀半ばに日本に伝わり「唐柿」と呼ばれた。狩野派の絵師・狩野探幽は、ひだの多いトマトを描いた。鑑賞用だったが明治に米国から輸入された9品種が「アカナス」として栽培された。多くの人が食べるようになったのは昭和に入ってからだという◆大正10(1921)年生まれの俳優、随筆家だった三國一朗さんは、子どもの頃、祖母がもらってきたトマトを初めて食べた。ソースをかけた。「それは洋食であるから、というのが私の思想であった」(『日本の名随筆・肴』作品社)◆トマトは毎年、庭のわずかな場所に植える。雨よけに市販のビニール製屋根をかける。なりはじめると次々に実をつけて結局粗末にしてしまう。三國さんの祖父は、輪切りにしたトマトに塩をほんの少しつけ、うまそうに酒を飲んでいたという。無駄にしないためにまねをしてみようか。