2025.6.5 みすず野
2025/06/05
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「もはや絶滅寸前といわれる煙草飲みたちが、煙草への想いやあこがれ、禁煙の試みなどを綴ったユーモアとペーソスあふれるアンソロジー」と裏表紙に書かれた先月の新刊『もうすぐ絶滅するという煙草について』(ちくま文庫)が面白い◆目次には作家、俳優、漫画家、詩人、落語家など42人が並ぶ。冒頭は「たばこすふ煙の垂るる夜長かな」という芥川龍之介の俳句。4こま漫画も1点あるが、それ以外はエッセー◆作家の開高健さんは「たばこは要らん、という人はストレスを感じないで生きている人でしょう。ということはものを考えん、感じんということや。僕は体の健康よりも魂の健康や」と語る。英文学者の小田島雄志さんは体が衰弱して入院。たばこをやめる。それからたばこを吸う夢を何度もみる。吸ってからもみ消し「だれかに見られていないかあたりを見回すのである」と◆かつて社内では喫煙しながら仕事をした。煙がもうもうと立ちこめていたが隔世の感がある。禁煙してから15年。驚いたのは直後に急激に太ったことだ。だからといってやせるためにまた喫煙することはない。ものだって考えるし感じてもいる。