2025.5.31 みすず野
2025/05/31
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作家の辻邦生もしたためた寄せ書き。画家の石井柏亭の作品「山河在」。木曽馬の第三春山号の剥製―。小紙で第1週を除く水曜日に掲載中の「ミュージアムから~収蔵品紹介~」で今春、取り上げられていた。いずれも戦後80年の節目を意識したことが伺える◆寄せ書きは旧制高等学校記念館(松本市)の収蔵品。大町市の工場に動員されていた「松高理科一年五組一同」によって、勤労動員が解除された昭和20(1945)年8月19日に書かれた。当時の学生たちの思いはどのようなものだったか。辻は「七轉八起」と記している◆柏亭の「山河在」は昭和20年11月から12月初めにかけて制作された。松本市美術館にある。梓川と奈良井川の合流点辺りから遠くに北アルプスを望む絵だ。「乱れた世であっても、自然が私たちに語りかけることは変わらない」。戦後の感慨を込めた作品だと解説が載る◆剥製は開田郷土館(木曽町)で展示されている。第三春山号は、戦争の影響で絶滅の危機にあった木曽馬の血を奇跡的に後世へつなげた名馬だ。これらのものに平和の尊さをあらためて教えられる。反戦の思いをいま一度強く持ちたい。